06 塩屋ヶ元港
入江つくる溶岩に注目
桜島の至る所に、「避難港」と呼ばれる港がある。
緊急時の島外避難のために設置されており、「退避舎」という頑丈な建物も併設されている。
桜島港フェリーターミナルや新島を含め22の避難港があり、赤水港から順に反時計回りに反時計回りに番号が付けられている。
現地には目立つところに番号が記されているので、ぜひ訪ねて見つけてほしい。
「お気に入りの避難港探し」もオススメだ。
こんな楽しみ方をする観光客はまずいないが、各港からの景色はそれぞれ異なり飽きない。
8番の避難港である塩屋ヶ元港は、ボクのお気に入りの港だ。
集落を越え、坂を下ると、入江と海が目に飛び込んでくる。
ここの海は鮮やかなブルー・・・ではなく、エメラルドグリーン。
海底より湧く温泉の成分が、海を緑色に染めるのだという。
注意深く目をこらすと、岸沿いの海底から気泡があがっているのが分かる。
シーカヤックなどで探検すれば、よりはっきりと温泉の湧くところを確認できる。
港の奥まで行くと、風情ある建造物が現れる。
これは温泉施設の跡だ。
現在は営業していないが、以前は入浴や宿泊ができたという。
火山は、この場所でも人々の生活を潤していたようだ。
入り江を作り出す溶岩にも注目したい。
入り江の出口に向かって右側は、764年の天平宝字溶岩。
樹木に覆われ、もはや溶岩であることはわかりづらい。
一方、左側は1946年の昭和溶岩。
ゴツゴツとした岩肌とクロマツが目立つ。
ここへ来れば、時代の違う溶岩上の景色を一瞬で見比べることができるのだ。
いつか、ここへハンモックを持ってきて、力の限りだらだらとした休日を過ごしたいと思っている。
右手にビール、左手に本。携帯電話は持ってこない。
時間を気にせず潮風に身を任せる一日。
完璧な休日のお手本のようではないか。
まずはハンモックと休日を探さなくては・・・。
NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2012年8月7日「桜島ルーキー日記(塩屋ヶ元港)」 ※筆者本人により一部加筆修正