09 白浜の石畳道

生活変化し役割終える

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雄大な山容、溶岩原、噴煙など、圧倒的な自然が生みだす火山の景色は、桜島の一番の魅力である。
しかし、麓や周辺で暮らす人々があっての「桜島」だし、火山で遊ぶ方法だってたくさんある。
連載では、地域に残る生活の遺産や、桜島の遊び方など、ガイドブックにはあまり載らない魅力も随時紹介していきたい。

桜島の北部、奥平バス停付近から200メートルほど山側へ進むと、白浜の石畳がある。
島の歴史を知る上で、ぜひ訪れたい場所だ。

人がやっと行き違いできるかという幅の石畳道が、山へ向かって延びる。
緑深く風情ある小道だ。
石の大きさ、形状は必ずしも均一ではなく、人の手で造られたであろうことがうかがえる。
靴底から伝わるゴツゴツとした感覚を味わいながら坂を上れば、3分ほどで行き止まりにぶつかる。

以前は、島内各地にこのような石畳の道があったそうだ。
山へ向かう道は、未舗装のままだと雨水や生活排水で浸食されてしまう。
それを解決するために、石が敷かれていったという。
しかし、自動車の普及に伴って、昭和中ごろより徐々に失われ、現存するのはここだけ。
生活の変化によって、石畳は役割を終えた。

昔の景色を思い浮かべてみる。
あちこちにみられる石畳。道の両側に並ぶ家。
往来する人々や駆ける子どもの声。上り坂の向こうでは、南岳が時折息を吐く。
桜島の日常。たくましく美しい、火山島の暮らし。苦労は多くとも、山と生きる人々。

この記事を書くにあたり、あらためてここを歩いてみた。
すると、行き止まりだと思っていた場所から、まだ先にも道が通じているではないか。
人の行き来はほとんどないため、火山灰が堆積し、倒木が道をふさいでいた。
悪路をさらに約3分。白浜の石畳道は今度こそ終点を迎えた。

NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2012年9月18日「桜島ルーキー日記(白浜の石畳道)」 ※筆者本人により一部加筆修正

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