14 安永諸島
海底噴火が生んだ島々
新島(しんじま)、猪ノ子(いのこ)島、中ノ島、硫黄島。
桜島の北東沖に浮かぶ4つの島を、安永(あんえい)諸島と呼ぶ。
1779年に始まった安永噴火の際に誕生したからだ。
安永噴火は、過去17回あった桜島大噴火のひとつに数えられる。
大量の軽石や火山灰が噴出し、北東と南の両斜面より溶岩が流れ、島は形を変えた。
死者は100人以上。噴出物の量は、大正噴火と同程度だと考えられている。
噴火は、陸上のみならず海底でも起きた。
海底より流出した溶岩が海上へ姿を現したのが、安永諸島だ。
約1年の間に9島が生まれ、合体や浸食の結果、現在4島が残っている。
また、海底噴火は津波を引き起こし、10メートル以上の波が桜島沿岸を襲ったとの史料も残る。
山の大爆発、溶岩の流出、新たな島の出現と津波。
当時の住民は、どのような気持ちで変わりゆく故郷を見守ったのだろうか。
4島のうち、新島と中ノ島は、溶岩の島ではない。
地下からのマグマの上昇によって海底が持ち上げられ、陸地となったという。
新島島内の標高10mを越えるような場所に、貝の化石がびっしりとつまった地層がある。
海の底が隆起して島になった証拠だ。
無人島となった新島だが、200名以上の住民がいた時期もあり、小学校の分校も置かれていた。
廃校となった今も校舎は残り、子ども達がいたことを教えてくれる。
南部は軽石でできた浜。
歩けばしゃりしゃりと心地よく、かつては海水浴客でにぎわったそうだ。
ここから眺める桜島は絶景で、昭和火口が大きく口を開く。
時折行き交う船の音を除けば、人工的な音は聞こえてこない。
すさまじい形成過程を思わせぬ、のどかな島だ。
今、洋上にたたずむ桜島は、「氷山の一角」にすぎないのかもしれない。
普段は見えぬ海底もまた、生きる火山の一部なのである。
NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2012年11月20日「桜島ルーキー日記(安永諸島)」 ※筆者本人により一部加筆修正