16 世界一の桜島小みかん
火の島の恵み、旬に
12月に入り、桜島小みかんが旬を迎えた。
畑はオレンジの実で彩られ、島内を走る軽トラックも心なしか多い気がする。
先日、収穫作業を体験させていただいた。
最初に覚えることは二つ。まずは「2度切り」だ。
ひとつの実を大切に収穫するために、ハサミを2度入れる。
1度目で枝と実を切り離し、2度目で実のヘタぎりぎりの場所を切る。
こうして、店に並ぶ姿となる。
鹿児島の言葉だろうか。皆、収穫作業のことを「小みかんちぎり」という。
ちぎると聞いて少々大雑把な印象を受けたが、実際の仕事はとても繊細だ。
もうひとつは「色の区別」。
同様に色づいて見えるみかんにも、わずかな濃淡の違いがある。
色の濃いものから順にハサミを入れるのだ。
そのため、同じ木でも時期をずらし数度に分けて作業を行うのだとか。
これはナカナカ難しく、指導をいただきながら進めた。
甘い香りのする中、徐々に作業に慣れてきた。
しかし、樹齢100年越えの木ともなると大変だ。
途方もなく大きく広がった枝のあちこちに、実が顔を見せる。
これらも全て人の手で収穫するのだ。
枝をかきわけ、時には木やはしごに登って、身をよじりながら、なんとかちぎる。
翌日は筋肉痛であった。
一日でこの有様。毎日作業される方には感服する。
今回お邪魔した松浦町には、世界一の小みかんの木がある。
平成15年、樹齢200年ともいわれる巨木に、24,649個ものみかんが成った。
万単位の実が1本の木に成るなんてちょっと想像もできない。
ちなみにボクは「2万ヨロシク」と語呂合わせでこの記録を覚えている。これでもう忘れないですね。
収穫以外にも、施肥、剪定など一年中農作業は忙しい。
生産の過程や苦労を知れば、みかんもより甘く、ありがたいものとなる。
鹿児島の冬の風物詩。
地元のものを、年に一度はいただきたい。
NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2012年12月18日「桜島ルーキー日記(世界一の桜島小みかん)」 ※筆者本人により一部加筆修正