17 桜島一周

肌で受け止める「旅」

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車で、自転車で、あるいは自分の体ひとつで。
どれほどの人が、桜島を一周したことがあるのだろう。
ボクは「岬」や「島」へ行くと、先端を目指したりぐるっとまわったりしたくなる。
誰に強いられるわけでもないのだが、そうしたい衝動に駆られるのだ。
車ではもう何度もまわった。昨年末、ビジターセンターを基点として、ランニングと自転車で島を一周した。

ランニングでは反時計回りのコースをとった。
一周約36キロ。簡単な道のりではない。
4分の3が坂道なのだ。
序盤は余裕がある。
「ここはこんなに急な坂道だったのか」とか「はじめて見る看板だ」などと、普段は見逃してしまうような景色を、ゆっくりと楽しみながら。
道中頼りになるのは、各所にある距離案内の看板だ。
徐々に残りの距離が減ってゆき、着々と前へ進んでいることがわかる。
後半は海沿いの平たんな道。
さすがに景色を見る余裕はなく、歯を食いしばりながらゴールした。

自転車では、海側を走りたいがために、時計回りのコースをとった。
急坂には苦労したが、風の心地よいサイクリングだった。
思わず足を止めたのは、地獄河原周辺だ。
荒涼とした溶岩原から望む昭和火口には、いつ見ても圧倒される。
自分の力で訪れたからか、いつもより大きく厳かに感じた。
静かに呼吸する火口を後にして、ゴールを目指した。

終わってみればどうだろう。疲労もあるが、達成感がはるかに勝る。
島内のあらゆるものを肌で受け止める「旅」を終えたという、何にも代えがたい達成感だ。

次は、徒歩での挑戦を検討中だ。
毎年「桜島ナイトウォーク」が開催される。
一晩かけて歩き、島を一周するイベントだ。
人の寝静まる夜、山はどんな姿を見せてくれるのか。
また新しい桜島に出合うことができそうだ。

NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2013年1月15日「桜島ルーキー日記(桜島一周)」 ※筆者本人により一部加筆修正

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