22 桜島溶岩加工センター

伝わる火山との向き合い方

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「溶岩プレート」をご存知の方は多いかもしれない。
主に焼肉に用いられる、溶岩製の調理機材だ。
初めて見たときには「これが溶岩?」とあっけにとられた。
自分の顔が鏡のように映るほど、表面がピカピカに磨かれているのだ。
島で見るゴツゴツとした無骨な溶岩とは似ても似つかぬ、洗練された外見だ。

首をかしげながらもよく見れば、色合いや模様は確かに溶岩のそれなのだ。
元は灼熱のマグマである。
保温性に優れ、遠赤外線効果もあり、肉がやわらかく焼けると好評だという。
なるほど、溶岩にはこのような使い方があったのだ。

赤水町にある桜島溶岩加工センターは、その名の通り「溶岩を加工する」工場だ。
プレートのほかにも、岩盤浴の石材、石碑、建築用資材など、あらゆる加工品を作っている。
場内では、所狭しと並んだ機械が、大きな音を立てながら仕事を進めている。
巨石を板状にカットするもの、表面を磨くもの、石をくりぬいて成形するものなど、機械の大きさや種類は様々だ。
工場見学のようで、訪れるたびにワクワクする空間である。

最近、この工場では体験型観光にも取り組んでいる。
溶岩を景色として楽しむだけでなく、実際に肌で感じてもらうためだ。
機械で溶岩を加工したり、溶岩を使ってピザ窯を作ったりと、ここでしかできないことばかりである。
敷地のすぐ裏は大正溶岩原だ。溶岩を見ながら、溶岩に触れる。
火山への理解や印象が深まるに違いない。

「島中にある溶岩をなにか活用できないだろうか」という思いがきっかけで、同センターは設立されたという。
噴火のたびに大地を焼き尽くし、生活を飲み込んできた溶岩も、考え方次第では大切な資源なのだ。
加工品やそれを生かした体験からは、この地で暮らす人々が導いた火山との向き合い方が伝わってくるようだ。

NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2013年3月19日「桜島ルーキー日記(桜島溶岩加工センター)」 ※筆者本人により一部加筆修正

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