23 城山

島のすべてを知る場所

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鹿児島市の城山は、県内でも有数の観光スポットである。
鹿児島市街地と桜島を一望する絶好の展望所として、あるいは西南戦争の激戦地として、県内外に広く知られている。
ボクもはじめて鹿児島を訪ねたときには、ここからの景色を楽しんだ。

今日の主役は桜島にある「城山」だ。
フェリーターミナルすぐ裏の台地のことで、袴腰台地とも呼ばれている。
ここは、桜島の全てを知る場所といっても過言ではないかもしれない。

城山は、姶良カルデラの外輪山の一部である。
つまり、桜島誕生以前からこの地に腰を据えているのだ。
現在に至るまでの火山の成長を、全て見届けているのである。

人間も度々この場所を利用してきた。
「城山」の名のとおり、戦国時代には島津氏によって長門城(三角城)が築かれた。
薩摩と大隅の間に位置する桜島は防衛上の要衝で、戦国時代、この城は島津氏の重要な軍事拠点であったという。

第二次大戦中には、台地の内部に壕が掘られた。
米軍の本土上陸を阻止するために編成された「第五特攻戦隊」司令部の基地だ。
手掘りのトンネルの総延長は、約650メートルにも及ぶ。
梅崎春生は、通信兵として当地に従軍した経験をもとに、小説『桜島』を著したことで知られている。

現在は、桜島自然恐竜公園として、親子の憩いの場となっている。
等身大の恐竜の遊具が置かれ、休日は子ども達の声でにぎわう。
ローラー滑り台からの眺望はバツグンなので、是非大人も上ってみて欲しい。
今の姿だけを見れば、かつて軍事施設があったことなど、誰も想像できないだろう。

誕生以来、度々繰り返された桜島の噴火。
その島で繰り広げられてきた、人間のあらゆる物語。
城山は全てをお見通しなのだ。これからも、桜島の活動と人々の紡ぐ歴史を静かに見守ってゆくのだろう。

NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2013年4月9日「桜島ルーキー日記(城山)」 ※筆者本人により一部加筆修正

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