35 桜島の風景印
こんなところにも存在感
ボクの祖父の趣味は切手収集である。
小さいころ、コレクションを見せてもらったことがある。
鮮やかな色のものから古く色あせたものまで、さまざまな絵柄がアルバムに並んでいた。
切手には、必ずといってよいほど日付や地名が記された消印が押されていた。
まだ見ぬ土地の地名を見て、子どもながらに世界の広さを感じたことを覚えている。
今日の主役は、「消印のようなもの」の一種である「風景印」だ。
「ご当地消印」とでも呼べばよいだろうか。
日付、郵便局名に加えて、局周辺の名所や史跡までが描かれた消印のことである。
郵便を送る際に窓口でお願いすると、通常の消印の代わりにこのスタンプを押してもらうことができるのだ。
観光客に人気で、収集家も少なくないと聞く。
島内にある西桜島、東桜島の両郵便局でも、この風景印を押してもらえる。
描かれているのは、もちろん桜島だ。
おそらく鹿児島市街地から見たものだろう。
市街地の街並みと錦江湾の向こうに、穏やかな山の姿がある。
1952(昭和27)年、両郵便局では、霧島に続いて県内2番目に風景印が設置された。
南岳山頂の噴火が始まる前に作られたからか、噴煙はなく優しい表情だ。
桜島の風景印は、島外でも見ることができる。
鹿児島市、姶良市、霧島市、垂水市、鹿屋市、日置市の一部郵便局で扱われている風景印には、桜島の姿がある。
デザインはさまざまだ。
たとえば、鹿児島東局では西郷銅像と桜島、国分局では縄文人と桜島、という風に。
それぞれの地域が、桜島のある景観を大切にしている証拠といえるかもしれない。
「鹿児島のシンボル」と称されることもある桜島。
その存在感を、こんなところにも確かめることができた。
皆さんの地域の風景印にも、きっと地元の特色ある景色が描かれているはずだ。
NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2013年10月8日「桜島ルーキー日記(桜島の風景印)」 ※筆者本人により一部加筆修正