43 橋上のアート
デザインに島知る工夫
街灯、橋、マンホールを見れば地域のことがわかる、というのはちょっと言い過ぎだろうか?
これらのデザインには、その土地の特色が反映されていることが少なくない。
以前紹介した「桜島大根の街灯」は、一目で「山と噴火と大根が有名である」とわかる街灯であった。
今回は、思わず目を引く「橋」を紹介したい。
まずは、湯之平展望所の近くにある引ノ平橋だ。
ここには、子どもが描いたであろう絵がいくつも埋め込まれている。
港、アコウの木、桜島大根、島で一番のイベント「火の島祭り」などが、一枚ずつ全く違う趣で描かれている。
眺めているだけで「桜島の一年」を体験できたような気分になれる。
島内有数の土石流発生河川である野尻川。
ここに架かる橋も粋だ。
欄干のモチーフは、噴火する桜島。
橋の上からは、欄干と同じ姿の桜島を見ることができるのだ。
実は、野尻川の河床にも巨大な絵が描かれている。
噴火する山と、ミカン、大根、ビワ。
島の恵みがぎゅーっと詰まった素敵なアートなのだが、土石流の土砂に埋もれて隠れてしまうことも少なくない。
立ち寄ってぜひ探してみていただきたい。
ボクの一番のお気に入りは、第一古里橋である。
ここには、「島廻り」をテーマとした2枚の絵が飾られている。
1枚には、大正噴火前に盛んだった小舟を使った島廻り競漕が、
もう1枚には、競漕を踊りで応援する女性たちの姿が、それぞれ、生き生きと描かれている。
2つの扇子を使う「桜島・島廻り節」は、鹿児島市の指定文化財として今も残る。
地域の懐の深さや遊び心のようなものが伝わる、温かい作品の数々。
「こんなところにこんなモノがあったんだ」という、偶然の出合いを楽しみたい。
普通は通り過ぎるだけの橋。
立ち止まってみると、地域のことが少しわかったような気が...しないだろうか?
『南日本新聞』 2014年2月11日「桜島ルーキー日記(橋上のアート)」 ※筆者本人により一部加筆修正