44 桜島大根のぐるぐる巻き
冬の恵み、無駄なく味わう
冬になると、軒下に干された大根の姿をよく目にする。
全国的にみられる冬の景色かもしれないが、ここは桜島だ。
軒下のそれは、桜島大根であることが少なくない。
桜島大根をこのように加工することを「ぐるぐる巻き」と呼ぶらしい。
多くの家庭で作るという。
まずは、桜島大根を1~2㎝程度の厚さで輪切りにする。
さすが世界一の大きさである。
直径30cm近くになることもあり、スライスされても迫力がある。
一度この状態で干して、水分を飛ばす。
次は、輪切りの大根を、かつらむきの要領でむいてゆく。
ぐるぐると手元で渦巻くように回る大根。それにあわせて進む包丁。
なるほど、「ぐるぐる巻き」である。
誰がこう呼び始めたか知らないが、ボクでも同じ名をつけただろう。
大根は次々とひも状になってゆく。
薄すぎると食感がなくなるため、ある程度の厚さを保つのがコツだ。
こうしてできた紐状の大根を、もう一度干す。
降灰のない冬晴れの日を選び、天日にさらすこと数日。
乾燥してしわしわになればできあがりだ。
袋詰めして冷凍庫へ入れておけば、1年以上保存がきくのだとか。
この時期にたくさん採れる大根を、無駄なくいただくための知恵なのだろう。
去年作ったものをおすそ分けしていただいたので、まずはそのままかじってみた。
弾力があり、噛めば噛むほど、大根の風味と甘みが口の中に広がってくる。
数時間水で戻してよく搾り、鰹節をふって醤油をかける。
これでおかずが一品できあがりだ。
面倒くさがりのボクでも、これならできる。
栄養たっぷりの桜島大根を、いつでも楽しめるというわけだ。
全国に知られたこの島の恵みは、冬に慌ただしくやってくる。
旬に訪れることができない遠方の方には、「桜島流切干大根」をおすすめしたい。
『南日本新聞』 2014年2月25日「桜島ルーキー日記(桜島大根のぐるぐる巻き)」 ※筆者本人により一部加筆修正