50 火山と人々と

宝物はまだまだ

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一目見た瞬間に魅了された。
海に浮かぶようにたたずむ山容は、非の打ちどころがないくらいカッコいいではないか。
異世界を思わせる溶岩原、山肌に刻まれた複雑な模様、毎日のように噴煙を吐き出す姿は世界中の人々をひきつける。
こうした圧倒的な景観は、度重なる噴火の歴史の賜物だ。

島を形作るのはそれだけではない。
火山活動の影響を受けながらその麓で暮らしてきた人々の軌跡の結果、現在の桜島がある。
自然と人間とのつながり。
ここでの生活は、それを教えてくれた。

はるか昔、縄文時代から人々が暮らしてきたという。
歴史時代には、少なくとも4度の大爆発が起こり、そのたびに島は形を変えた。
1955年からは、1年と休まずに火山灰を降らせている。
それでもこの島には5,000名近くの人々が家を構える。

大噴火や土石流のたびに、人々は大きな被害を受けた。
しかし、災害が過ぎれば、この土地は魅力あふれる場所だったに違いない。
農地に適した火山麓扇状地、島を囲むように広がる起伏に富んだ海、島内各地で湧く温泉、そして文句なしに美しい山の姿。
自然が持つ厳しさと優しさ。
そのどちらとも真摯に向き合いながら、生活してきたのだろう。

今やこれからを生きる私たちも、その歴史の上に立っている。
次の大噴火が起これば、一旦はこの島から人々がいなくなるかもしれない。
しかし、長い年月をかけて溶岩上に草木が戻ってくるように、人々もまたこの土地に帰ってくるのだろう。

本連載を続けるにあたり、島の方々はもちろん、読者のみなさんにもたくさんのことを教えていただいた。
まだまだ知らないことばかりだ。
いつもまでも「ルーキー」の視点でこの島を見つめること。
それがボクの役目だと思っている。
桜島には、発掘を待つ宝物がたくさん眠っているに違いない。

『南日本新聞』 2014年5月20日「桜島ルーキー日記(火山と人々と)」 ※筆者本人により一部加筆修正

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