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桜島大根のぐるぐる巻き

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冬の恵み、無駄なく味わう

冬になると、軒下に干された大根の姿をよく目にする。
全国的にみられる冬の景色かもしれないが、ここは桜島だ。
軒下のそれは、桜島大根であることが少なくない。
桜島大根をこのように加工することを「ぐるぐる巻き」と呼ぶらしい。
多くの家庭で作るという。

まずは、桜島大根を1〜2cm程度の厚さで輪切りにする。
さすが世界一の大きさである。
直径30cm近くになることもあり、スライスされても迫力がある。
一度この状態で干して、水分を飛ばす。

次は、輪切りの大根を、かつらむきの要領でむいてゆく。
ぐるぐると手元で渦巻くように回る大根。それにあわせて進む包丁。
なるほど、「ぐるぐる巻き」である。
誰がこう呼び始めたか知らないが、ボクでも同じ名をつけただろう。
大根は次々とひも状になってゆく。
薄すぎると食感がなくなるため、ある程度の厚さを保つのがコツだ。

こうしてできた紐状の大根を、もう一度干す。
降灰のない冬晴れの日を選び、天日にさらすこと数日。
乾燥してしわしわになればできあがりだ。
袋詰めして冷凍庫へ入れておけば、1年以上保存がきくのだとか。
この時期にたくさん採れる大根を、無駄なくいただくための知恵なのだろう。

去年作ったものをおすそ分けしていただいたので、まずはそのままかじってみた。
弾力があり、噛めば噛むほど、大根の風味と甘みが口の中に広がってくる。
数時間水で戻してよく搾り、鰹節をふって醤油をかける。
これでおかずが一品できあがりだ。
面倒くさがりのボクでも、これならできる。
栄養たっぷりの桜島大根を、いつでも楽しめるというわけだ。

全国に知られたこの島の恵みは、冬に慌ただしくやってくる。
旬に訪れることができない遠方の方には、「桜島流切干大根」をおすすめしたい。

NPO法人桜島ミュージアム 大村瑛
『南日本新聞』 2014年2月25日「桜島ルーキー日記(桜島大根のぐるぐる巻き)」
※筆者本人により一部加筆修正